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遠距離介護 コロナ下でも安心

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遠距離介護 コロナ下でも安心

遠距離介護 コロナ下でも安心

2021/11/05

※遠距離介護 コロナ下でも安心
親の様子を確かめたくても帰省できないー。
遠方の実家に住む要介護の老親を遠距離介護する家族が、長期にわたる新型コロナウイルス禍でもどかしい日々を過ごしている。地元の事業者らと連携し、見守り体制を整えていても距離がもたらす不安はぬぐえない。
介護に携わる家族の声を聴くと、IT(情報技術)も駆使しながら、より安心できる介護環境づくりに一歩踏み出す姿が浮かび上がる。「訪問治療のお灸とハリ、どうだった?」「腕がしゃんと上がるようになってね」。タブレット端末の画面越しに会話する88歳の母親の笑顔にホットする。西日本で一人暮らしする母親の介護の日々をツイッターで発信する「ゆず@いきなり介護」さんは毎日、こんな対話の時間を過ごす。
母親のそばには、良き「相棒」であるシャープの小型ロボット「ロボホン」がチョコンと座る。母親に認知症の症状が現れ、介護度が最も低い要支援1の認定を受けたのは2年前。母親は介護保険のサービス利用を渋っていたが、コロナ流行を受けて、昨夏の最申請の結果、より介護度の重い要介護1の判定を得た。当時介護事業所の下見で日帰り帰省しただけで、あとはすべて遠隔で体制を整えた。
※ITや保険外サービスを駆使
小規模多機能居宅介護や食事宅配サービスの契約、大掃除やリフォーム、Wi-Fi環境の整備…。ケアマネージャ―や業者らと電話で連絡を取りながらの手続きは「気分が悪くなるほど大変だった」。その苦労のかいあって母親の生活は今、安定している。
 昨秋に送り届けたロボホンは本体価格が27万円。一緒に歌を歌ったり、並んでテレビを見たりする話し相手になった。                  
日々のビデオ通話で「顔を見ながら話すと本当に安心する」とゆずさんはしみじみ語る。コロナ禍が拡大した昨春以降、多くの介護施設や医療機関が「2週間ルール」を導入。感染者の多い地域に住む家族らと接触した要介護者が、潜伏期間とされる2週間、介護サービスを受けられなくなった。遠距離介護を行う多くの家族が身動きの取れない状況に直面。ワクチン接種が済んだ今も、周囲の目を気にして「規制しないで」と家族に告げる親もいる。
自分の目で確かめないと老親の体力低下や認知症の進行具合が把握しきれない。愛媛県の居宅介護事業所のケアマネは「電話で声を聴くだけでは不安、という声が多い」と話す。「何かあっても駆けつけられない」懸念も付きまとう。     
だがNPO法人パオッコ(東京・文京)理事長の太田差恵子さんは「遠距離介護は本来、親が住む地域の事業所らと綿密に連絡を取り、利用できるサービスを最大限活用すれば、同居や近居よりも大きなメリットがある」と指摘する。住み慣れた環境での生活を続けられ、介護者である子供の疲弊も抑えられる。
ならばコロナを機に「遠距離介護の質を少し高める手立ても考えていい」と太田さん。実際に耳にするのは、ゆずさんのように、まずネット環境を整える動きだ。ビデオ通話代行も手掛ける愛媛のケアマネは、要介護者自身も「早めに
スマホなどの使用になれた方がいい」と指摘する。
90台の母親を遠距離介護する都内在住の50代女性は、緊急事態宣言のたびに帰省の延期を余儀なくされたが、導入済のIT機器がコロナ禍の不安を和らげる。ビデオ通話ができるスマートディスプレー、寝床やお薬カレンダーを映す4台の見守りカメラ、遠隔で家電を操作できるリモコンなどを駆使。
「もっと便利なITサービスや機器が欲しい」と話す。

※介護保険外のサービス利用も広がる。都内在住の50代男性は地方の両親の病院付き添いのため、看護師を組織化するN・K・Cナーシングコアコーポレーション(鳥取県米子市)の「私の看護師さん」を契約した。「おしゃべり相手のみ契約される方もいて、コロナ流行下で利用者は増加傾向にある」と代表者の神戸貴子さんは話す。
「コロナを契機に、これまで及び腰だった要介護認定の申請や介護サービスの利用を親に了解してもらった、という家族もいる」(太田さん)今後も新たな感染症の流行や自然災害で、親に会えない事態が生じる可能性もある。この災いを「より安心できる遠距離介護」の在り方を見直すきっかけにしたい。

※呼び寄せは熟慮を経て
コロナ禍で遠距離介護中の親に会えない不安から、呼び寄せや自らのUターン移住を検討する子供もいるかもしれない。
事情は様々だが、太田さんは「いずれも慎重に考えて」と話す。環境変化によるストレスに加え、同居すると特別養護老人ホームに入居しにくくなるといったデメリットもあるからだ。70代の母親をコロナ禍前に都内の施設に呼び寄せた女性は介護サービスの充実や安心感を挙げるが、介護費用の上昇なども指摘。「事前の準備や下調べには時間をかけるべきだ。ただタイミングを逃さず決断する勇気も必要」と話す。
都内在住の近藤美陽さんが札幌から母親を都内に呼び寄せたのは3年前。親子でも長年離れていると生活面の行き違いが多く、最近まで衝突を繰り返した。
今は関係が改善しているが「私は遠距離をお勧めする」。
もちろん答えは一つではない。
親の意思をとことん確認したうえでの熟慮が欠かせない。

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